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相続は資産の継承だけではない。
一般的に「相続」というのは、人の死亡に伴い無償で相続人に財産を移転することをいいますが、相続の実例のなかには財産の移転という点だけでみると「争族」や「争続」となっているケースも少なくありません。
相続というのは法律用語のひとつであり、ある人が亡くなったときに、その妻や子どもなどが残された一切の財産を、一定の基準によって受け継ぐことであり、亡くなった人を「被相続人」といい、財産を受け継ぐ人を「相続人」といいます。
この相続人が受け継ぐ財産は、現金や預貯金、土地や建物、家財道具などの目に見える財産や、借地権や借家権などといった目に見えない権利もあります。
これらがいわゆる資産(積極財産)と呼ばれるものです。
しかし、相続はそれだけではありません、借金などの負債(消極財産)も相続財産に含まれます。
このため、親や配偶者などが亡くなったときには、残された財産の内容を調べて、その結果によって相続するか、相続しないかを決めることができます。
例えば、父親が亡くなったのち、なにもしないでそのままにしておくと、借金などの負債も含めて全て相続したとみなされ、これを「単純承認」といいます。
一方、父親が多額の借金を抱えたまま亡くなり、残された資産を全部処分しても借金が返済できないという場合には、「被相続人の亡くなったことを知ったときから3か月以内」に、家庭裁判所に相続を放棄することを申し出ることができ、これを「相続放棄」といいます。
また、遺産の内容を調べてみたものの、残された借金が資産より多いのか少ないのかはっきりしない場合には、一応は相続するが、負債は残された資産の範囲内で返済し、負債を返済したのちにもなお資産に余りがあるときは、その余りを相続人のあいだで分配するという、「限定承認」という方法も認められています。
このように、相続にかかわる資産にはプラスの財産とマイナスの財産があり、相続人には財産を相続するかどうかを選ぶ権利があります。
「相続」とは、亡くなった人が残した財産上の法律的地位をそっくり受け継ぐことであり、相続人は、その人が亡くなったときにはまだ具体化していない権利や義務を引き継ぐこととなり、ときには借金の保証人の地位など、その義務に伴う責任を果たさなければならないこともあります。
戦前のわが国の制度では、長男が家督を相続するものとされており、配偶者や家督を継がない子どもには相続権がほとんどありませんでした。

 

 

 

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